In Maidjan – Heilung /ハイルング の和訳。タイトルはおそらくゴート語の「𐌹𐌽 𐌼𐌰𐌹𐌳𐌾𐌰𐌽 (腐敗・破壊)」に由来する。かつては平和であった村が、戦争によって破壊されていく様子を表した曲だと思われる。
MV
In Maidjan – Heilung 和訳
戦の神ハリガスティ
目覚めよ
我はルーンマスター、名高きウルの使いは、太陽神を我が軍に召喚する
富、野牛、棘、神、騎乗、松明
贈呈品、喜び、雹、欠乏、氷、年
木、幸運、ヘラジカ、太陽、テュール、白樺
馬、人、水、豊穣、日、家
オーディン、戦に備えよ
輝く目をした者へ、ルーン文字を捧ぐ
不届き者に対するご加護を
友である我の為に
注釈 / 解説
1: ᚺᚫᚱᛁᚷᚫᛊᛏᛁ ᛏᛖᛁᚹᚫ – ネガウ・ヘルメットの碑文
この文字はネガウ・ヘルメット (Negau helmet) の碑文から取られている。ネガウ・ヘルメットとは、1812年にシュタイアーマルク公国ネガウ近郊のゼニャク村 (現在はスロベニアのネゴワ) で発見された26個のヘルメットのこと。このうちの「ネガウB」には、北方エトルリア文字で以下のように書かれている。
𐌇𐌀𐌓𐌉𐌙𐌀𐌔𐌕𐌉𐌕𐌄𐌉𐌅𐌀///𐌉𐌐 harigastiteiva\\\ip
ここに含まれる「harigasti teiva」が歌詞に使われている。「The English Language Before England: An Epigraphic Account」によると、「teiva」は北欧神話に登場する軍神テュールのことを指しているようだ。「Hariχasti (ハリガスティ)」はこのテュールの名前で、分解すると「*harja-」は軍隊、「*gastiz」は客人を意味する。「死んだ戦士を客として招く神」と解釈されるようだが、分かりにくいので「戦の神」としている。この戦の神に対して、「ネガウB」が献上されたものだと考えられている。
2: Tawol aþodu – トロルヘッタンの金貨
スウェーデンのトロルヘッタンで発見された金貨に書かれている碑文が、これに同じ。この金貨はスウェーデン国立歴史博物館が所蔵している。
3: Ek Erilaz Owlthuthewaz Niwaremariz Saawilagar Hateka Harja – リンドホルムのアミュレット、トルスベルクの鞘尻
この文のほとんどはリンドホルムのアミュレット (Lindholm amulet)に刻まれた碑文からの引用。
ᛖᚲᛖᚱᛁᛚᚨᛉᛋᚨ[ᚹ]ᛁᛚᚨᚷᚨᛉᚺᚨᛏᛖᚲᚨ᛬ ᚨᚨᚨᚨᚨᚨᚨᚨᛉᛉᛉᚾᚾ[ᚾ]ᛒᛗᚢᛏᛏᛏ᛬ᚨᛚᚢ᛬ ekerilazsa[w]ilagazhateka: aaaaaaaazzznn[n]bmuttt:alu:
「ek」は自分、「erilaz」はルーンマスター、「Sawilagaz」は太陽を意味するᛊ(ソウィロ)から派生したオーディンの別名、「haite’ka」は呼ばれるの意。
そしてトルスベルクの鞘尻 (Thorsberg chape)には以下のように書かれている。
ᛟᚹᛚᚦᚢᚦᛖᚹᚨᛉ / ᚾᛁᚹᚨᛃᛖᛗᚨᚱᛁᛉ owlþuþewaz / niwaje͡mariz
「owlþu」自体は「光輝」を意味するが、ここでは決闘の神であるウルのことを指していると思われる。「-þewaz」は召使い。「ni-」は否定詞、 「waje-」は苦痛、「-mariz」は名高いを意味する。
最後の「harja」はこれらの碑文に含まれない言葉だが、ノルド祖語で戦士を意味する「ᚺᚨᚱᛃᚨ」のことだと考えられる。
4: Fehu, Uruz, Thurisaz… – ルーン文字
ここからはルーン文字 (ᚠ, ᚢ, ᚦ…)の意味の羅列。それぞれの文字は複数の意味を持つ場合もあるが、ここでは一般的な定義を用いている。
5: Wotani Ruoperath
「Wotan」はオーディンのこと。このフレーズは「The Walking Dead Universe」で「戦争に備えよ」という意味で使われていたので、そのまま拝借した。
6: Gleiaugiz Eiurzi
「Texts and Contexts of the Oldest Runic Inscriptions」によると、「glei」が輝く、「augiz」が目。「eiurzi」→「ïurnzl」と解釈して、全体で「輝く目をする者がルーンを聖別する」という意味になるらしい。
7: Ai au is urki – エッジャ石碑
これはエッジャ石碑 (Eggja stone)からの一文。「悪事を働く者に対する守護」を意味するようだが、詳細はよく分からない。
8: Uiniz Ik
「uiniz」は友や愛する者、「ik」は自分を意味する。これに関しては参考訳がなかったため、独自の解釈を加えて訳している。