Kimochi Warui – Car Seat Headrest / カー・シート・ヘッドレスト の和訳。新世紀エヴァンゲリオンの有名な台詞「気持ち悪い」は、解釈が難しい言葉だ。それと同じように「気持ち悪い」と表現されるウィルの絶望は、簡単には理解されないものだということ。
How to Leave Town (2014) 収録曲
- The Ending of Dramamine
- Beast Monster Thing (Love Isn’t Love Enough)
- Kimochi Warui (When? When? When? When? When? When? When?)
- I-94 W (832 mi)
- You’re in Love with Me
- America (Never Been)
- I Want You To Know That I’m Awake/I Hope That You’re Asleep
- is this dust really from the Titanic?
- Hey, Space Cadet (Beast Monster Thing in Space)
MV
Kimochi Warui – Car Seat Headrest 和訳
ウィル、正直になれ
誰と戦ってるのか言ってみろ
自分の世話もできないなら
お前がここにいる意味はなんだ?
昔は答えがあると思ってた
若い頃に聴いた音楽の中に
でもブライアン・ウィルソンの自伝を読んでからは
真実を知ってる
彼は父親から愛されたことがなくて
バンドは金だけが欲しくて
デニスはアル中で
宝探しをして溺れていった
それに、周りの人間全員から
ドラッグを渡されて、金を奪われていく
彼は社会に受け入れてもらうことに依存してたらしい
他の人間と同じように
じゃあ、祈る相手はもういないや
もう夜を過ごす場所もない
ここにいること自体つらい
満足できる人生というものは、信じない
死ぬまで疑問と心配を抱き続けるんだろう
天国には行かない、地獄にも行かない
死んだ後にどうなるだの、信じない
気持ち悪い
気持ち悪い
気持ち悪い
気持ち悪い
気持ち悪い
気持ち悪い
この一部は症状
この一部は人の性
どうするべきだろう
もっと良い人間になるのか
今の自分を受け入れるのか
話してきた人
読んできた本
観てきたテレビ、映画
そのすべてに救いを求めた
どう生きればいいかを学ぼうとした
でもいつ?いつ?いつ?いつ?
いつ?いつ?いつになったら学べるの
注釈 / 解説
「気持ち悪い」は『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』の最後の台詞。シンジが馬乗りになってアスカの首を絞めている最中に、彼女から頬を撫でられる。思わず首を絞めるのを止めたシンジに対してアスカが「気持ち悪い」と言い放って物語は幕を閉じるのだ。
あまりにも脈絡のない言葉だったために考察が多数存在するように、真意が分からない以上は適切な英訳が非常に難しい。直接対応する言葉がないからだ。この歌詞中でも「気持ち悪い」に対する6通りの訳案を使ってウィルの心情を表現しようとしている。
「気持ち悪い」に行き着く前に、ビーチ・ボーイズの話が登場する。ウィルはビーチ・ボーイズのファンだと過去の曲でも綴っていたので、才能に溢れたブライアン・ウィルソンを羨望していたのだろう。しかし彼の過去を遡ってみるとかなり暗い話が多い。例えば、父親に2×4木材で殴られてから右耳が聞こえなくなったという話。これが難聴の直接的な原因であるかは不明だが、別の機会に殴られたことが原因の候補に挙げられてしまうところが闇深い。また、ブライアンが精神を患った時に掛かった精神科医のユージン・ランディは、大量に薬を処方し、高額の治療費を請求し、音楽のプロデュースにまで関与してブライアンから金を巻き上げた。さらに弟のデニスもまともに活動ができなくなるほどアルコールと薬物に依存し、39歳の誕生日を迎えて間もなく、酩酊状態でマリナ・デル・レイへ飛び込み溺死してしまった。昔投げ捨てた元妻との写真をこの海で見つけたことがあったらしく、その宝探しを続けた結果のようだ。
そうして憧れの人物の素性を知り、崇拝の対象は神ではなく人間だと気づいてウィルは絶望するのである。その感情が「気持ち悪い」に集約されている。