A Christmas Fucking Miracle – Run The Jewels の和訳。2013年のデビューアルバム「Run the Jewels」のクローザー。この曲でエル・ピーはジェントリフィケーションと利己的なエリート層について、キラー・マイクは政府と音楽業界の腐敗について語っている。
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和訳
ブルックリンのアトランティック通りにいた俺
左右を見ることもなく、車の行き交う道路を走った
親父たちは去った、でも俺は残り、放浪した
鉄とセメントが自然になった場所で
この場所の改修は気に入っているよ、とても素晴らしいね*1
善人の血が流れる都市景観
そして夢見る者は、陶器に閉じ込められた雄牛*2
神にひざまずけば、馬糞をもらえる
スリルのために生きたいか? 彼らが手配してくれるさ
俺には憎しみを吐き出す小鬼の群れがいる
そいつが頭に入り込んでパニックを引き起こし
有名になりたいと必死に懇願するようになる
尊厳は汚され、孤児にさせられ
正気は歪みの端にある
ただ奪って蓄える、奴らは何なんだ?
自分の取り分も得られない、俺は何なんだ?
最も影響を受ける心たち
操作する力に犯され、情報を入れられる
心配するな、お前、泣くな
お前が生まれながらに持つエネルギーを、奴らが奪うことはできない
それが理解できれば、お前が貧しくなることは決してない
お前はすでに戦争に勝ったんだ、生まれながらに豊かだ
お前が持てるエネルギーは自分の中にしかない
お前の神がいる領域や家に戻るんだ
その神が誰であろうが、何であろうが
お前がいくら富を得たところでどうでもいい
そのくだらないことをしようとする奴らはクソくらえだ
オークの住む炎に送ってやれ*3
俺たちよりも賢いと思い込む、奴らの迷える心は
愛の重要性を理解してない
俺たちはそれを武器にして、奴らを真実に引き戻すことができる
灰と塵が形成されたこの場所で
このビートで強打、お前の歯は折れる
その犬歯は記念に俺の拳に埋めておこうか
お前のべニアはただの土産物みたいだ
その口から抜け落ちて、風景に溶け込む
俺とエル・ピーは秘密の握手を交わす
そして腫れあがった頭のクズのニキビ顔にパンチをぶち込む
ボコボコになるまで、そいつはパウンドケーキくらいに甘いから
(ザコだろ、マイク?)ああ、エル、そうだな
イントゥ・ザ・ワイルド、ワイルド・スタイルのゲットーの子供が暴れまわる*4
ライオンとフクロウが住む場所で
権力者たちは恩赦すら申し出た
ひざまずけば、俺たちを排除することはないと言って
でもそんなものは王や女王に与えればいい
偶像崇拝者や物質主義者に
俺は野蛮人と一緒にジャングルにいる方がいい
殺すか殺されるか、俺は平均で働く
俺の名誉教授は言った*5
アメリカに連れて来られた俺たちは呪われていると
ひとり親として、どうやって一人の人間を育てるのか
結婚もしない、先祖もわからない
プランド・ペアレントフッドが支援する計画的流産*6
でも、俺の母親がすでに物語を持っていたことはラッキーだった
10代の恋の産物、俺の傲慢さは
両親がした仕事への誇りから来ている
マイクという名前は、神みたいだと言われた*7
悪魔と踊っても、うまく切り抜けられた
お前らを称えるかって? あり得ない
まだアメリカを3つのKで綴る
スパイス 1 とオシェアに感謝だ*8
そして俺が経験したことを理解するMCたちに
本物のラップ、俺の最後の一行は真実
ピンプ・Cとカムも安らかに眠れ*9
俺たちがお前らのためにやるよ
脚注
*1 ニューヨークのジェントリフィケーションへの言及。つまり富裕層が移住することで街並みは美しく改修されるが、家賃が上昇するために古い住民の居場所がなくなる。「Love what you did with the place」も上流階級特有の言い回し。
*2 「bull trapped」は直訳すると「閉じ込められた雄牛」だが、経済用語で「ブルトラップ」といえば市場が一時的に上昇するように見せかけるも、実際には急落するトレンドを指す。「陶器」はここでは神や宗教的な力の象徴として使われている。組み合わせると「陶器に閉じ込められた雄牛」となり、祈りを捧げることだけに時間やお金を使って路上生活から抜け出すことができない状態を表している。また「bull in a china shop(陶器店の雄牛)」というフレーズは「乱暴者」の意味がある。
*3 映画『ブレードランナー』のセリフ「Fiery the Angels fell, deep thunder rolled about their shores, burning with the fires of Orc.(燃える天使たちは墜落した、深い雷鳴が岸辺に響き渡り、オークの炎で燃えていた)」への言及。このセリフ自体はウィリアム・ブレイクの『アメリカ ひとつの預言』に書かれているフレーズを改変して引用したもの。この本はアメリカ独立戦争を舞台にした物語で、オークは反逆の化身として描かれる。
*4 「イントゥ・ザ・ワイルド」は彼らの2012年のツアータイトル。『ワイルド・スタイル』は1982年のヒップホップ映画。
*5 この名誉教授はジョン・ヘンリック・クラークのことだと明かされている。彼は影響力のある教授であり活動家で、イモータル・テクニックも「Conquerors」で彼のスピーチを引用している。
*6 プランド・ペアレントフッドは、人工妊娠中絶手術を提供しているアメリカの医療団体。
*7 「Michael(マイケル/ミカエル)」という名前はヘブライ語で「神のような者は誰か」という意味。聖書に登場する大天使聖ミカエルは、悪の勢力と戦う神使である。
*8 「Amerikkka」は、白人至上主義組織「KKK」の混じったアメリカ、つまりアメリカが差別主義であることを指している。スパイス・ワンは「AmeriKKKa’s Nightmare」、アイス・キューブ(オシェア)は「AmeriKKKa’s Most Wanted」をリリースしており、エル・ピーがプロデュースしたキラー・マイクのアルバム「R.A.P. Music」は「AmeriKKKa’s Most Wanted」にインスパイアされている。
*9 ピンプ・CはUGKのメンバーで、リーンの過剰摂取と睡眠時無呼吸症の合併症により33歳で死去した。カム・タオはエルピーのレーベルと契約していたMCだったが、2年間の肺がん闘病の末に30歳で亡くなった。
歌詞