Nagorny Karabach – Einstürzende Neubauten の和訳。「ナゴルノ・カラバフは天国のように美しい」と本で読んだことから、その美しい想像を膨らませた曲である。一方で、戦争が絶えない現実も覗かせている。
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和訳
霧の下に広がる町
僕は山の上に立ち
黒い庭のなか
天国との間で板挟みだ
僕の選択の包領で
僕は隠れている
ナゴルノ・カラバフにて
かつては森林、
山脈、氷もあったかもしれない
真鍮の太陽が
パラダイスを侵す
僕の収縮期と拡張期
その間の一瞬一瞬は
鳥たちによって運ばれる
ここで起きていることについて
僕の心の包領で
自分を見失う
ナゴルノ・カラバフにて
僕は山を下って
谷をまた渡っていく
そこには色とりどりの旗が並び
カラバフ山を覆う
2羽の大きな黒いカラスは
木に実ったプラムを貪る
他の都市で、僕は愛されるだろうか
僕の選択の包領で
僕は隠れている
ナゴルノ・カラバフにて
会いに来て
僕には無限の時間がある
この眺めは一番美しい
雲と街を見下ろした景色
ナゴルノ・カラバフにて
ナゴルノ・カラバフ
ナゴルノ・カラバフ
解説
この曲はブリクサがサン・フランシスコに住んでいた時に書かれている。他のアメリカの都市と違い、サン・フランシスコには異質な空気が流れていたことを「ナゴルノ・カラバフ」に結び付けたという。この曲ができた頃のナゴルノ・カラバフは、アゼルバイジャン領内にぽつんと存在する「アルメニアの包領」であった。歌詞にも「Enklave (包領、飛び地)」という言葉が繰り返し使用されるほか、「黒い庭」というキーワードも出てくる。これは「カラバフ (Qarabağ)」がアゼルバイジャン語で「黒い庭」を意味するからである (qara→黒い、bağ→庭)。
また、ポーランドのジャーナリストであるリシャルト・カプシチンスキの著書『帝国 ロシア・辺境への旅 (Cesarz)』の影響も受けている。このドキュメンタリー本には、パスポートを偽造して侵入したナゴルノ・カラバフの景色が思いがけず「今まで訪れた場所の中で最も美しい」「まるで天国のようだ」と綴られる。カプシチンスキの著書は若干創作が入っているのではないかと言われたりもしているが、内容の真偽はともかく、ブリクサは彼の著書を愛読していて、ここからインスピレーションを得たようだ。
1994年まで続いたナゴルノ・カラバフ戦争で、ナゴルノ・カラバフはアルメニアの領土となったのだが、それからも度々衝突が起きている。2020年には大規模な紛争に発展し、これにより領土の大部分がアゼルバイジャンに帰属された。2022年にも再度軍事衝突しており、依然として膠着状態にある。
歌詞