A.D.H.D – Kendrick Lamar / ケンドリック・ラマー 和訳

A.D.H.D – Kendrick Lamar の和訳。1980年代はクラックコカインが大流行した。コカイン漬けの母親から生まれた「クラックベイビー」の多くがADHDと診断された。この曲は、ADHD治療薬を含めた薬物に毒された世代をテーマにしている。

MV

A.D.H.D – Kendrick Lamar 和訳

オリジナル🔗Genius

[Intro: Kendrick Lamar]

いや、もう知らねえよ

[Chorus: Kendrick Lamar]

8本のジョイント もう知らねえよ
ケース入りの12本のボトル もう知らねえよ
2錠と5グラム もう知らねえよ*1
浴びまくれ お前の年齢なんて存在しなくても*2

[Verse 1: Kendrick Lamar]

おい アイツまたトリップしたんじゃないのか
起こしてやれ 冷水を用意しろ
バイコディンを持ってきてくれ*3
それで痛みが取れるといいが
この気分から逃れられるように
セクション80の人間は*4
理解者なんていないと思ってる
お前は孤独だから 孤独だから
マリファナのエンドルフィンがお前を強くしてくれる*5
俺はホームパーティーでトリップする
俺の世代は水みたいに咳止めシロップを飲むんだ*6
キッチンにはパンケーキなんてないけど*7
結局さ ここの誰も気にしてないんだ
世界がもうすぐ終わるとかいう迷信のこと*8
誰が知るかよ? 俺らが耳を貸すことなんてない
808が奏でる音じゃない限り (メロディーと数人の女)*9
プレイステーションとパープルドリンク (テクノロジーが俺の魂を買ったんだ)*10
周りを見渡せば大勢の観客 これが俺の生み出したものだ
みんな反逆者の夢と繋がってる みんな血縁なんだろう*11
そう、彼女の大統領も黒人 彼女も黒人*12
彼女の背中にはパープルレーベル その錠剤はライトブルー*13
彼女はそれを飲んで頭へぶち込んだ 彼女は俺を見る
彼女はADHDなんだ*14

[Chorus: Kendrick Lamar]

8本のジョイント もう知らねえよ
ケース入りの12本のボトル もう知らねえよ
2錠と5グラム もう知らねえよ
浴びまくれ お前の時代なんて存在しないんだから

[Post-Chorus: Kendrick Lamar]

こんな感じだ woah-woah, woah, woah-woah, woah (限界なんてない、もっとくれよ)
Woah-woah, woah, woah-woah, woah (限界なんてない、もっとくれよ)
(ADHDのせいって言われたんだ)
Woah, woah-woah

[Verse 2: Kendrick Lamar]

そして彼女は始め出した*15
そしてこのアパートで 他の誰とも違う気分になり始めた
「え、なんて?俺はラップしてるけど、君っていくつなの?」
彼女は22と言った 俺は23と言った「じゃあお互いクラックベイビーだね」えっと
「どういうこと?」彼女は言った「私のドリンクはどこ?」*16
「あとで教えてあげる 近所の人にも警察にも安心してって言っておいて」
俺は立ち上がって ブラインドを下ろして ジャンボトロンスクリーンを閉じた*17
彼女がいる後ろに回り込むと 彼女は言った「空気を読んでね」うん
ライトが消えたとき 十分近い距離であってほしい
ヌーヴォが効いてきたら*18 彼女はもっと打ち解けてくれるだろう
お互いかなりいいムードになってる
でも俺らには何もできない 誰かが1ポンドを持ってきたから
(ああ)
それはベイエリアのクッシュ*19 彼女は俺を見て それを見た
彼女はそれを掴んで こう言った「教えてあげる」
「なんで私たちがクラックベイビーか それは80年代に生まれだから
ADHDクレイジーってこと」

[Chorus: Kendrick Lamar]

8本のジョイント もう知らねえよ
ケース入りの12本のボトル もう知らねえよ
2錠と5グラム もう知らねえよ
浴びまくれ お前の時代なんて存在しないんだから

[Post-Chorus: Kendrick Lamar]

こんな感じだ woah-woah, woah, woah-woah, woah (限界なんてない、もっとくれよ)
Woah-woah, woah, woah-woah, woah (限界なんてない、もっとくれよ)
(ADHDのせいって言われたんだ)
Woah, woah-woah

[Outro: Ab-Soul]

俺のコカインを全部あげるよ それに火をつけてやるよ
カップ2杯に 2、4、6 スプライトを混ぜて*20
エクスタシー、シュルーム、コカイン、マリファナ、女 いくらでも
俺のコカインを全部あげるよ それに火をつけてやるよ


注釈


*1 「half-weight = 5g」は一回に摂取する粉状のドラッグの量。

*2 「when your age don’t exist」は、まだ生まれていないときから親が薬物を乱用していたことを意味している。この「age」は「H」と発音が似ているため、「Hが存在しない」という意味にも捉えられる。この「H」は「ADHD」の「Hyperactivity (過活動)」のこと。

*3 「バイコディン (Vicodin)」は、アセトアミノフェンとヒドロコドンの合剤である鎮痛薬。アセトアミノフェンは肝臓への負担が大きく、多量の摂取が危険であるため、ここでは「冷水抽出 (cold water extraction)」という手法でアセトアミノフェンを取り除こうとしている。前のラインの「I set him in」はアセトアミノフェンの略語「acetamin (アセタミン)」の発音に似ている。

*4 アルバムタイトルにもなっている「セクション80 (Section.80)」 は、1980年代に貧しい地域で生まれた世代のこと。

*5 エンドルフィン(endorphin) は、多幸感をもたらす神経伝達物質で、脳内麻薬とも呼ばれる。

*6 咳止めシロップの成分はコデインで、リーン (lean) などのパープルドリンクとして乱用されている。

*7 咳止めシロップとメープルシロップとの対比。

*8 この曲がリリースされたのは2011年。この頃は「2012年人類滅亡説」が話題になっていたが、自ら身を滅ぼそうとする若者にとってはどうでもいい仮説である。

*9 「808」はローランドが1980年に発売したリズムマシン。特定のものにしか興味を示せない行動は、ADHDの特徴である。

*10 この世代はゲームに没頭するか薬物を乱用するかの2択であるということ。

*11 「反逆者の夢 (A Rebel’s Dream)」はケンドリック自身が行う運動を意味する一方で、ボブ・マーリーの同名のアルバムのレファレンスでもある。ボブ・マーリーはすべての人々が遠い親戚であると歌っている。

*12 国のトップであるオバマ大統領が同じ黒人である一方、ドラッグにまみれた彼女も黒人である。つまり歴然とした貧富の差である。

*13 パープルレーベルはラルフローレンのブランド。ライトブルーの錠剤はADHD治療薬のアデロール。

*14 彼女はADHDを口実にアデロールを乱用している。また「ADHD」は「80-HD」にも聞こえるため「治療薬が手放せないセクション80の人間」の意味も込められている。

*15 何かしらの薬物でハイになり出したということ。

*16 ケンドリックの質問をはぐらかす理由は、警察を警戒しているからだと考えられる。そしてケンドリックは質問したことをすぐに忘れてしまう。ADHDの症状である。

*17 ジャンボトロン (Jumbotron)は大型のフルカラーディスプレイ。

*18 ヌーヴォ (Nuvo) は、ピンク色のスパークリングリキュール。

*19 クッシュ (Kush) は、西海岸のラッパーに人気のある大麻。ベイエリアはサンフランシスコ・ベイエリアのことで、大麻文化が定着している。

*20 コデインの入ったパープルドリンクを作っている。