Hood Politics – Kendrick Lamar / ケンドリック・ラマー 和訳

Hood Politics – Kendrick Lamar の和訳。フッドとは、いわゆる「ギャング」の多い閉鎖的で比較的貧しい地域。そんなフッドで育ったケンドリックがフッドのしきたり(hood politics)、そして最上層の「ギャング」である政府への批判を綴っている。

MV

Hood Politics – Kendrick Lamar 和訳

オリジナル🔗Genius

[Intro]

K・ドット、電話取れよ*1
毎回留守電になるんだけど
まさかあのキモいラップでもやってんじゃないよな?
靴下なしでスキニー履いてたりして
ハハハハハハハハハハ
シャニーカの携帯にかけてこいよ!

[Chorus: Kendrick Lamar]

初日から俺の成績はA-1だったんだよ、お前らは底辺だろ*2
お前の仲間も お前の地元も、底辺なんだよ
お前と一緒に登校してたクソアマも、底辺なんだよ
お前が孕ませた女も今のビッチも、底辺なんだよ
俺らはフッドにいてたんだ 22口径を持った14歳
14年後も変わらず全力だ 誓ってやるよ
死んだ仲間に

[Verse 1: Kendrick Lamar]

今のラップバトルになんて興味ねえよ
友達のスタナ・デュースは二度と帰ってこない*3
だからレコードを作るときは毎回全力を尽くせ
アイツらが言うことはクソだ お前の曲は最高だ*4
このゲームに出て このゲームに牙を立てろ
チェーンは着けずに お前のフッド、お前の名前で戦え*5
ダブルアップしろ*6 カネを生み出せ*7 全員集まれ
台本通りにしてみろ これだからアイツらにベンジャミンは来ねえんだ*8
スキップ ホップ ドリップ ドロップ
フリップ フロップ 白のチューブソックスで*9
そして「シャーム・スティックに火をつけろ」*10
それが化学物質の混ざった臭いだ
50ニガズの敬礼*11 余分を持ってコンプトン動物園を脱出*12
エル・コも モンテカルロも ロードキングも ドレッサーも
リップ・リダズも Pファンカーも メキシコ人も お前を仕留めてやる
アジア人も お前を仕留めてやる お前に勝てるヤツなんていねえよ*13

[Chorus: Kendrick Lamar]

初日から俺の成績はA-1だったんだよ、お前らは底辺だろ
お前の仲間も お前の地元も、底辺なんだよ
お前と一緒に登校してたクソアマも、底辺なんだよ
お前が孕ませた女も今のビッチも、底辺なんだよ
俺らはフッドにいてたんだ 22口径を持った14歳
14年後も変わらず全力だ 誓ってやるよ
死んだ仲間に

[Verse 2: Kendrick Lamar]

キャデラックから飛び出す 女にしゃぶらせてすぐ*14
近所のヤツらに呼び出される 「敵軍は集まったぜ」
正気か? ザコが俺のフッドと戦おうってか?
正気か? その心臓のために走った方がいいんじゃねえの?
正気か? ここにあるものがすべて*15 全部がスキャンダラス
救急車もスローモーション この辺はカメラだらけ*16
ロスの警察はとりあえず発砲して後始末に必死 刑期は増える*17
名前が公開される お前がこの夏ずっと告げ口してたからな
ストリート、俺のために頑張れ*18
新しいギャングが来るらしい
コンプトンから議会まで
全員が攻撃を仕掛ける
どうせ新種のデモクリップとリブラディカン風邪が流行ってるだけだ*19
赤い州と青い州—どっちの政治担当だよ?
アイツらは銃とドラッグを与えて 俺らを罵る*20
アイツらは誓ってお前を抱いてくれるってよ
コンドームもつけずに抱いてくれるってよ*21 オバマは言う「よお、みんな」*22

[Interlude: Kendrick Lamar]

オバマは言う「よお、みんな 」
オバマは言う「よお、みんな 」
オバマは言う「よお、みんな 」

[Chorus: Kendrick Lamar]

初日から俺の成績はA-1だったんだよ、お前らは底辺だろ
お前の仲間も お前の地元も、底辺なんだよ
お前と一緒に登校してたクソアマも、底辺なんだよ
お前が孕ませた女も今のビッチも、底辺なんだよ
俺らはフッドにいてたんだ 22口径を持った14歳
14年後も変わらず全力だ 誓ってやるよ
死んだ仲間に

[Verse 3: Kendrick Lamar]

誰もが話すネタは 誰が何したとか
誰がリアルで誰がダサいとか 誰が白人で誰が黒人とか
批評家どもはヒップホップが良かった時代が恋しいとか言ってる
バカかよ それならキラー・マイクがプラチナ超えてんだろ*23
お前らの優先順位が狂ってる 間違った場所にエネルギー使うなよ
ヘネシーとクラウン・ヴィクトリア*24 記憶はどこかへ消えた
授賞式のカメラ割りのことなんて訊くな
彼女のことも訊くな ヴォーグのことも訊くな*25
パワーのことなら答えてやるよ 俺にはたくさんあるってな
スヌープの隣にいていいのは俺だけだ*26 そのボタンを押すために
海岸を待機させる
「K・ドット、どうしてる?アイツらがパンドラの箱を開けたらしいぞ」*27
俺は全部を箱に詰め込んだ 圧倒的勝利で
おいやめろ 神経質すぎだ ストリートに蔓延してるだろ*28
俺が宣言すれば海岸の争いだ 歴史は繰り返される*29
でも俺は内輪で解決した ジェイとプライベートホールで話したときに*30
こう言ってた「ひとつのヴァースがゲームを拗らせるなんてな」*31

[Chorus: Kendrick Lamar]

初日から俺の成績はA-1だったんだよ、お前らは底辺だろ

[Poem: Kendrick Lamar]

お前が詰められてたときを思い出す
お前が影響力を乱用してるって
俺も同じことをしたんだ
怒りに任せて権力を乱用した
その怒りは酷い鬱状態に変わったんだ
ホテルの部屋で叫び声を上げて
自爆なんてしたくなかった
ルーシーの悪魔が周囲を囲む*32
答えを求めて走って行った
家に着くまで
でもサバイバーズ・ギルトはなくならない*33
この繰り返しだ
俺のスタイルは確立したんだと言い聞かせて
俺はA-1なんだと言い聞かせて
愛する人たちがずっと戦争にいるなかで
俺は街に戻る
そして新しい戦争に踏み込む


注釈

*1 イントロはフッド時代の旧友からの留守電。K・ドットはケンドリックのあだ名。成功を手にして多忙になったケンドリックの生活を想像することができない友達は、自分が捨てられたと勘違いし「ケンドリックは金を手にして変わった」と暗に批判している。

*2 「A-1」は最優秀の成績の意味。「boo-boo」はフッドで使われるスラングで「shit」と同じ意味である。

*3 スタナ・デュース (Stunna Deuce) は、同郷コンプトン出身のチャッド・アルバート・リー・キートン (Chad Albert Lee Keaton) のこと。コンプトンで撃たれ、23歳で亡くなった。

*4 ここからの「お前」はケンドリック自身への呼びかけ。

*5 ラッパーはたいてい高級なチェーンなどのジュエリーを身に着けて財力を誇示するが、ケンドリックはそのしきたりに抗っている。そしてコンプトンという地元を背負ってこのラップバトルに参戦していることを主張している。

*6 ダブルアップ (double up) はカジノなどの掛け方で、掛け金を倍にすること。

*7 「bubble up the bread」にはいくつかの意味がある。直訳は「パンが泡を吹く」で、イーストが発酵して泡立つことを意味する。そして「bread」には「金」の意味があるため、「金が泡のように増える」という意味。さらに「Bubble Up」という名前の炭酸飲料もあるように、泡立つことは人気や知名度が上がることの比喩でもある。

*8 台本通りにしか動けないステレオタイプなラッパーは人気が出ないという意味。ベンジャミン・フランクリンは100ドル札の肖像画に使われていることから、ここでは「100ドル札」の意味。

*9 敵対ギャングに勝利した時に踊るクリップウォーク (crip walk)のオノマトペ。

*10 シャームスティック (sherm stick) は、液体のPCPに浸されたジョイントやタバコのこと。強い幻覚症状を引き起こす。燃やすとPCPのケミカルな臭いが漂う。

*11 2パックが「50 Niggaz」というタトゥーを入れているように、黒人が集まればどんな武器よりも強力になることを示している。

*12 コンプトン動物園は実際に存在している動物園ではなく、コンプトンという街がギャングスターやドラッグディーラーなどの危険人物を収容している街であることを動物園に例えている。

*13 南カリフォルニアのギャングの名前と人種を挙げ連ねている。つまり南カリフォルニアの犯罪率や暴力は「他に勝るものはない」ということ。「Black people are animals (黒人は動物だ)」と言った救急電話のオペレーターに対する声明であるとも考えられる。

*14 大統領専用車がキャデラックであることから、ビル・クリントンの不倫スキャンダルを想起させる。

*15 ローリン・ヒルの曲「Everything is everything」のレファレンス。これは不当な扱いを受ける黒人の若者の曲である。

*16 人が殺されてもいつまでも救急車が駆けつけないフッドの現状に加えて、犯罪ドキュメンタリーを撮りたがるカメラが蔓延っていることを指摘している。

*17 LAPDはロサンゼルスの警察のことで、正当な理由なく発砲し、その事実が表沙汰にならないように隠蔽していることを批判している。「football numbers」は刑期のこと。

*18 「Feets, don’t fail me now」の捩り。オバケが出てきたときに一目散に逃げるために「俺の足、がんばれ」という意味で使われるフレーズで、ここでは「feets」ではなく「streets」となっている。新たな刺客である「ギャング = 政府」が牙を剝いたとき、ケンドリックの拠り所は「ストリート」しかないということ。

*19 「Democrips」は「Democrats (民主党) + Crips (ストリートギャングのクリップス)」、「Re-Blood-icans」は「Republicans (共和党) + Bloods (ストリートギャングのブラッズ)」を合わせた造語。これらの言葉は第38代ミネソタ州知事を務めたジェシー・ベンチュラの著書「DemoCRIPS and ReBLOODlicans: No More Gangs in Government」から来ている。企業のロビー活動によって買われた政治家は特定の色に染まっていて (赤い州は共和党、青い州は民主党)、つまりはギャングと同じようなコミュニティを築いている。国がストリートギャングを批判する一方で、政府自身も同じようなことをしているという批判である。

*20 銃や薬物の乱用はストリートギャングのせいだと全責任を押し付ける国に対して、規制もせずに販売を認めている国の姿勢を批判している。

*21 「fuck with you」には二つの意味が考えられる。ひとつは性交 (fuck with you) の意味。国民からの支持を集めるために「あなたが好きだ (から票を入れて)」と言っている。そして政治家はいつも「あなたを搾取する (fuck with you)」。「コンドームなし」は無責任さの強調。

*22 「What it do?」はギャングが使用する親しみを込めた挨拶。オバマ大統領は黒人だが「所詮は政治家」であり、ブラックコミュニティからすると「向こう側」にいる存在である。オバマ大統領の努力の結果は人々を失望させている。この感情が、繰り返される「What it do?」の歪んだトーンに込められている。

*23 才能のあるラッパーが必ずしも売れるわけではない。キラー・マイク (Killer Mike) の歌詞は評価が高い一方で、あまり売れていない。そして批評家が目を向けるラッパーは売れていても才能がないものばかりだ。

*24 ヘネシーはポピュラーなコニャックで、クラウン・ヴィクトリアはパトカーを意味している。警察に連れて行かれたときに「告げ口」をしたかもしれないが、何が起きたかは酒で消えている。

*25 ヴォーグはケンドリックの持っている車。プライベートに関しては干渉するなということ。

*26 西海岸出身のラッパーではスヌープ・ドッグ (Snoop Dogg) とケンドリックが二大巨頭であることを言っている。そして「そのボタン」を押せば、東海岸との戦争が始まることを意味している。

*27 パンドラの箱は「災いが詰め込まれた箱」で、ここではケンドリックのキャリアに例えられている。コンプトンというフッドから生まれた弱い立場のラッパーはいつしか多大なる影響力を持った。そしてケンドリックが「そのボタン」を押せば、また暴力は繰り返される。

*28 ケンドリックの歌詞で触れられないことに不満を抱くラッパーが多いということ。

*29 ケンドリックは自身の曲「Control」で西海岸、そしてニューヨークの王であると名乗った。これを東西戦争の宣戦布告と捉える人も多く、かつての2パックVSビギーを思わせる。

*30 ジェイはジェイ・Zのことで、西海岸およびニューヨークの王と言われている。

*31 ジェイ・Zの「Imaginary Player」からの引用。

*32 ここでのルーシー (Lucy) は、悪を擬人化した姿である。

*33 サバイバーズ・ギルト (Survivor’s guilt) は、戦争などの苦境に遭いながら唯一生還した人のこと。ケンドリックは地元が未だ戦争中であるが、そこを抜け出したことでサバイバーズ・ギルトを感じている。