All Caps – Madvillain の和訳。マッドヴィランは、マッドリブとMFドゥームからなる伝説のデュオ。タイトルは「全部大文字」という意味。つまり「mf doom」ではなく「MF DOOM」ということ。
シングル・アルバム情報
ミュージックビデオ・オーディオ
和訳
酷いもんだ まるでヘタなパロディー
その理由は俺が登場したからだ 奴は人々に告げた「俺を陛下と呼べ」
お前のバッテリーを充電しとけよ 長く持たないだろうから
お前の芽がなかなか出なくても それは奴のせいじゃない
お前のヤリマン女に花を持たせてもらっときゃ良かったな
それに奴があのブロックを投げれば 手も足も出なかっただろう
それにお前も分かってるだろ そいつはコカインのブロックだってな
このビートはバターみたいにスムーズ ゆっくり切られていくサマを見とけ
奴は落ち着いたフローで言う「お前の母ちゃん—」 おい、俺のママの話はするな
たまに速く、たまに遅く、奴は韻を踏む
逆になることもある 美味しいバースのパイを作り上げてな
最初の一発でヒット この悪党は最悪の男だ
ホットな曲を見つけろ デカいケツを見つけるように
スクエア型のショットグラスから スコッチのショットを飲んで
大衆を引き込むまで 奴は止まらない
奴らがまだ知らないものを見せてやれ 糖蜜を温めたようなフローで
ロボットダンスから、ヘッドスピンから、ブーガルーに至るまで
文句たれの凡人を説得させるのも 数分しか必要ない
それは醜い、その顔を見てみろよ、残念でならない
でもこれだけは忘れるな 男の名前の綴りは全部大文字だ
そして奴は詩人みたいに韻を踏む 「ベビードール」みたいに
彼女は俺にすべてを捧げると言おうとして そして始めた「プレイボール」
いくら賭けても全部無駄! 悪党はサイコロに細工してるんだ
目撃者によると 奴は男に話しかけてそいつの頭をかち割った
おそらく調査はまだ続いてる
トラブルだらけのこの国で 最悪の容疑者を泳がせてるんだ
ジャックポットは2倍 本当に面倒事になっちまった
マッドマンはパッと消えたりしないさ 鼻ちょうちんみたいにな
解説
“You can call me Your Majesty”
MFドゥームの名前の由来となったドクター・ドゥームは、『ファンタスティック・フォー』などのアメコミに登場するヴィラン。
このコミックで登場する架空の国家「ラトヴェリア」の王がドクター・ドゥームである。そのため「陛下と呼べ」は至極真っ当な主張なのである。もちろんこれは「ヒップホップ界の王」だという意味にも取れるし、MFドゥームの別名がキング・ギドラであることにも繋がる。
(“Your mother—”), don’t talk about my moms, yo
これは「お前の母ちゃんでべそ」的なノリの、相手のママを侮辱する常套ジョーク。マッドヴィランの二人の間で、この手のジョークが一時的に流行していたようである。
例えばマッドリブは「America’s Most Blunted」で「Even your pops got smacked, even your moms got cracked (お前の父ちゃん大麻漬け、お前の母ちゃんコカイン漬け)」と言っているし、MFドゥームは「Between Villains」で「Everybody got one, your mom’s is a asshole (みんなひとつは持っている、お前の母ちゃんの意見はケツの穴レベル)」と言っている。ちなみにこれは「Opinions are like assholes: Everybody got one (意見とはケツの穴みたいなもので、みんなひとつ持っている)」という表現から派生している。
そしてこのトラックでも同じようにラリーが続くかと思いきや、食い気味に「ママの話はするな」と言ってこの流れを折ってしまった。
ミュージックビデオについて
MVはジェームス・レイターノ監督が手作業で制作したアニメで、2004年にストーンズ・スロウのウェブサイトで公開、2021年になってからHDバージョンがYouTubeで公開されている。
このアニメは『ファンタスティック・フォー』の生みの親であるスタン・リーとジャック・カービーへのオマージュとして作られていて、アメコミ界の白銀時代を忠実に再現している。というのも、メインプロットの合間に怪しい広告の数々が挟まれているところに注目してほしい。例えば「インスタント・ペット」と称されて売られていた「シーモンキー (アルテミアというエビの一種)」の広告だったり…
身長を伸ばすためのインソールの広告、
花の種などを送って景品をもらおう!と謳って、子ども向けに宣伝していたアメリカン・シード社の広告 (実はほとんどの子どもたちのもとに景品が届くことはなかったという詐欺広告) などなど。
その他、ヒップホップ関連のレファレンスも隠されている。「K-Telレコード」ならぬ「J-Telレコード」が登場したり、「Mail to the Villain」と題されたお便りコーナーに、ストーンズ・スロウ創始者であるピーナッツ・バター・ウルフの本名「MANAK」が隠されていたりと非常に芸が細かい。
そして最後は「Will Madvillain Survive the Minions of Death? Check Back Next Time, Pilgrims! (果たしてマッドヴィランは死の手下どもを相手に生き抜くことができるのか?次回もお楽しみに!)」という次回予告で幕を閉じている。
歌詞