The Heart Part 5 – Kendrick Lamar / ケンドリック・ラマー 和訳

The Heart Part 5 – Kendrick Lamar / ケンドリック・ラマー の和訳。俗に「フッド」と呼ばれる低所得者層の地域では、殺人を含め、犯罪が当たり前に起こっている。それを「文化」で済ませてしまって良いのか。殺害されたニプシーの声を通して語りかけている。

MV

MVではディープフェイク技術を使い、様々な人物のフェイクを作り出している。使用されたディープフェイクスタジオは、サウスパークのクリエイターであるトレイ・パーカーとマット・ストーンが運営する「Deep Voodoo」。

ディープフェイクされている人物は以下の通り:

The Heart Part 5 – Kendrick Lamar 和訳

オリジナル🔗Genius

[Intro]

年を重ねるごとに 人生にはそれぞれの視点があると気づいた
そして俺の視点は お前のものとは違うだろう
俺についてきてくれた全員に感謝を伝えたい
すべてのファンに、すべての美しいファンに
俺の曲を聴いてくれたすべての人に、すべての人に

[Verse 1]

俺は傷みの世代に生まれてきた この場所では殺人なんて小さいもんだ
レべリアスもマルジェラも デザイナー料金をお前からふんだくる
ベルトのバックルと影響力を持てば 暴力へ傾いて熱くなり過ぎて
間違った方向に進むんだ 自分の意思であれホイール・アラインメントであれ
残りカスは燻る これがインナーシティの霧だ
コミュニケーションを誤るから 地元の探偵はずっと忙しい
保護なしは危険だろ
鈍感になって 俺は傷みを破壊した
自分を覆い隠して カモフラージュした
弾薬の雨の音を聞くことにも慣れてきた
分析しろ、人生を賭けろ、責任を取れ
お前が家を出たらすぐ、お前の子供のママは犯される そういう文化だ
23時間の隔離 誰かが電話してきた
お前の甥が銃殺されたと 文化はそこに介入してる
俺は17年の刑を受けた奴も知ってる 更生施設に入ったが
出て来たら頭を撃ち抜かれた ハッパを買おうとしてただけで
洗車の時代は終わりだ GoFundMeの新規アカウントを作れ
新しい被害者がそんな夢を砕いていく それが文化なんだ

[Chorus]

( 俺が欲しいのは、俺が欲しいのは )
でもお前に必要とされたい ( 俺が欲しいのは、俺が欲しいのは )
フッドから必要とされたい ( 俺が欲しいのは、俺が欲しいのは )
俺はフッドに
お前にしてやったことを考えてくれ ( お前にしてやったことを )
お前にしてやったことを考えてくれ

[Verse 2]

俺は言ったよな 俺は俺の文化のためにやってるんだと
だから防弾のレンジローバーに乗った奴が どんな顔をしてるかわかるだろ
ママのソファには22口径のカリバー
髪は逆立つ、近づいて来いよ、これはPhotoshopじゃないから
双極性障害の友達は お前のポケットを掴んでくる
お前が固まっても選択肢はない いつも攻撃側を演じろ
みんな仕事に行って、ハッパを売って、仕事で遅くなる
遅くまで仕事をして、仕事を探しても、書類で引っかかる
そういう文化だ 周りを蹴落として、お前を売り込め
遠隔地、証人保護プログラム、奴らはお前に目をつけてる
ストリートが俺を狂わせたんだ 俺を恋しがってくれよ
俺は俺たちの代表になりたいんだ
新しい改革はもう進んでる
頭が混乱して涙を拭いてるとき 俺はアルゼンチンにいた
俺たちの間の水、また仲間は殺された
歴史は繰り返される
埋め合わせをしては、また同じ肌を持った人間を見つけてやるんだろ
でもそれが文化なんだ、ボトルを開けようぜ
シラフだと傷みに向き合うのは辛い
明日までに、俺たちは残りを忘れてしまう、俺たちはまたやり直してしまう
それが問題だ
俺たちはこういうことを受け入れるように訓練されてきた
人間性を失え、鈍感になれ
お前と俺の生き方をよく考えろ
俺は敵と握手を交わした お前に会うことを約束するよ
お前の思う平等が平等じゃない場所で
俺がそれを伝えてなかったとか 絶対に言うな
人を傷つけることが より多くの人を傷つける場所で
もうそれを文化と呼ぶな

[Chorus]

( 俺が欲しいのは、俺が欲しいのは )
でもお前に必要とされたい ( 俺が欲しいのは、俺が欲しいのは )
フッドから必要とされたい ( 俺が欲しいのは、俺が欲しいのは )
俺はフッドに
お前にしてやったことを考えてくれ ( お前にしてやったことを )
お前にしてやったことを考えてくれ

[Interlude]

ドラムを止めてくれ
( フゥ、フゥ
フゥ、フゥ
フゥ、フゥ)

[Verse 3]

戻ってきたとき 新しい人生を祝福しよう
俺たちが今学んでることに その目的はあるから
何に対しても 自分の利益を犠牲にしろ
次の世代が、俺たちの世代よりも良くなるように
俺は完璧じゃなかった 俺を包む肌はひどく苦しんだ
誘惑と忍耐、体が育てていくものすべて
良いことも感じたし、悪いことも感じた そして心配を感じた
でも結局 俺の生産性が突っ走った
恐怖と向き合え 俺がここで成功することなんてずっとわかってた
エネルギーを巨大化して 持ち堪えていると
そこに意識はシンクロして 澄み渡るくらいクリアになる
ユーフォリアを讃えよう 神が作り出したものは
俺の人生と今までの行いに反映される
借りを払って、ルールを作って、愛のために変わってきた
奴らは同じ視点を持って、学校のカリキュラムを変えた
それでも、銃身を見つめる俺を変えることはなかった
俺の最大のポテンシャルが見えないから、憤りを感じるべきなのか?
俺の善行を悔いるべきなのか?
すべてはすべてだ、偶然なんかじゃない
その朝、俺は起き上がった お前にやれる心臓をもっと抱えて
スピーカー越しに血を流すと 自分の存在を感じた
俺の兄弟に、俺の子供に、俺は天国にいるよ
俺の母に、俺の姉妹に、俺は天国にいるよ
俺の父に、俺の妻に、俺は真剣なんだ、ここが天国だ
俺の友達に、お前の与えられた恩恵を感じてくれ
俺のファンに、うまく投資してくれよ
そして殺人者に、俺の死を早めたお前
俺はお前を許すよ、ただしお前の魂には疑問が残る
その引き金を引いたとき お前の虹彩に傷みが見えた
お前には惨いことをされたが 俺は安心したんだ
俺は俺の役割を果たした まだ去るつもりじゃなかったけど
俺の日々は充実してた きっと神は喜んでるだろう
どれだけお前らのことを愛してるか、言い表せない
お前らをハグするために 体は必要ない
お前らのおかげで思い出は残る
リスペクトを持って俺を祝福してくれ
俺たちが守る団結力が 何よりも上だから
そしてサム、俺はお前のことを気にかけてるからな
俺の子供たちに、俺のインタビューを全部見させておいてくれ
俺たちが作った夢を、お前がすべて生きてくれ
お前の天才的な頭を稼働させておいてくれ
そして俺のフッドに、良い物事を普及させてくれ
子供たちやリーダーが刑務所から出られるように
トラブルがあったら救いを求めろ
自分を助けられない限り、世界を助けることもできない
そして俺が殺された日 俺はフッドを責めるつもりじゃない
お前の目で見ろ 感じるためにはそうするほかない
俺の身体が利益を生み出すわけじゃないが
このエネルギーはずっと運ばれ続けるから
お前が必要だ

注釈 / 解説

murder is “minor”

始めに出てくるこのラインで、フッドが抱える問題点が垣間見える。ケンドリックが初めて殺人現場を見たのは5歳の時。この時点で、この状況に「慣れなければいけない」ことを悟ったようである。つまり、殺人 (murder)という行為は「minor (たいしたことがない)」。

さらに「minor」には「子供」の意味もあるため、子どもが殺人に関与していることが含まれている。最後のラインに「emits still」という表現が使われているが、この言葉は「Emmett Till (エメット・ティル)」にも聞こえる。彼は複数の白人男性からリンチを受けて殺害された14歳の黒人少年であり、子どもが犠牲となった実例である。

ニプシー・ハッスル

「Verse 1」「Verse 2」は悲観的な内容になっているが、「Verse 3」から変化が見られる。ここでは特にニプシー・ハッスルの視点を描いている。ニプシーはラッパーであると同時に、ホームレスの就業支援やシェルターの建設を行うなど、とても献身的な活動家であった。彼自身クリップスというギャングでもあったものの、銃暴力には反対の声を上げていた。

しかし2019年3月31日、対立するギャングによって彼は銃殺されてしまう。間奏で「ドラムが止まった」のは彼の鼓動が止まったことを表している。ケンドリックはアルゼンチンのロラパルーザ出演時に、ニプシーの訃報を伝えた。

その後、兄のサミエル・アシュドム (曲中でサムと呼ばれている) がニプシーの子どもの後見人となった。

その他レファレンス

  • コーラスはマーヴィン・ゲイの「I Want You」が使用されている。
  • 「I’d do this for my culture…」はジェイ・Zの「Izzo (H.O.V.A.)」のオープニングライン。
  • ローリン・ヒルの「Everything is Everything (すべてはすべて)」という言葉が使われている。「Hood Politics」でもこの言葉が使用されている。