The Queen Is Dead – The Smiths / ザ・スミス 和訳

The Queen Is Dead – The Smiths / ザ・スミス の和訳。君主国家であるイギリスの政治体制をユーモラスかつ辛辣に批判した曲。タイトルはヒューバート・セルビー・ジュニアの『ブルックリン最終出口』に登場する同名の物語から取られている。

MV

The Queen Is Dead – The Smiths 和訳

オリジナル🔗Genius

[Intro 1: “Take Me Back To Dear Old Blighty”]*1

昔懐かしいイギリスに戻してくれ
ロンドン・タウン行きの列車に乗せてよ
どこにでも連れて行って
どこにでも降ろして
リヴァプールでも、リーズでも、バーミンガムでも
どうだっていい
俺が見たいものはー

[Intro 2]

奴らに祝福は与えないさ

[Verse 1]

さよなら、この国の活気のない沼地よ
ハンターに囲い込まれた雄ブタのように
女王低下の頭は吊り紐の中*2
言っちゃ悪いけど、それが素晴らしいことのように聞こえる
チャールズさん、こう考えることがあるでしょう?
デイリー・メールの表紙を飾って
お母さんのベールをかぶった姿を世間に見せたいと?*3

[Verse 2]

そして登録された史実を確認していくと
そこで見つけたものにとてもショックを受けた
俺が18番目の子孫だったとか、なんて屈辱的なんだ
しかもよく分からない昔のクイーンかなんかの
世界が変わったんだろうか? それとも変わったのは俺?
世界が変わったんだろうか? それとも変わったのは俺?
タフな9歳児はドラッグを売って
神に誓って言った、ドラッグがどんなものか知らなかったんだよ

[Verse 3]

そして俺は王宮に押し入った*4
スポンジと錆びたスパナ―を持って
女王は言った「ああ、あなたのことは知ってるわ、歌が下手よね」
俺は言った「それはどうでもいいんだ、俺のピアノを聞いてみてよ」
静かで乾燥したところへ散歩に行こうよ
大切なことを話し合おう
でもあなたがママのエプロンの紐に縛られてるから*5
誰も去勢について話すことはない

[Verse 4]

静かで乾燥したところへ散歩に行こうよ*6
大切なことを話し合おう
愛とか、法律とか、貧困とか
(それらが俺を苦しめる)
静かで乾燥したところへ散歩に行こうよ
大切なことを話し合おう
でも雨が私の髪をペタンコにする
(それらが俺を苦しめる)
化粧や長い髪に隠した嘘は、まだそこに存在する

[Verse 5]

身体を蝕むパブを通り過ぎて
教会はお前の金をむしり取る
女王は死んだんだよ、みんな
いつ崩れてもおかしくない、なんて孤独なんだ
身体を壊すパブを通り過ぎて
教会に行けば、求められるのはお前の金だけ
女王は死んだんだよ、みんな
いつ崩れてもおかしくない、なんて孤独なんだ

[Outro]

人生はとても長い、あなたは孤独なのだから*7
人生はとても長い、あなたは孤独なのだから
人生はとても長い、あなたは孤独なのだから
人生はとても長い、あなたは孤独なのだから

注釈

*1 冒頭で使われているのは「Take Me Back to Dear Old Blighty」という第一次世界大戦時に流行した曲。西部戦線の兵士たちがホームシックになった様子を歌っている。「Blighty」はイギリスを意味するスラング。

*2 陛下のことを「Your Highness」と呼ぶが、ここでは「Your Lowness」と「高位」ではなく「低位」であると罵っている。

*3 チャールズ皇太子はいつもエリザベス女王の影に隠れてしまっているため、皇太子自身が主役になりたくないのかと問いかけている。ただし、デイリー・メールはゴシップ紙である。

*4 1982年、マイケル・フェイガンという男がバッキンガム宮殿に排水管から侵入するという事件が起きた。一度目の侵入時は家政婦が見つけたが、警備が到着する前に逃げたため、家政婦が嘘の申告をしたとして片付けられてしまう。それから間もなくして二度目の侵入が成功してしまい、その際に女王の寝室のベッドに座って女王と会話をしたという。このセキュリティーの甘さによって、王室の重要性が薄れてきたのではないかと言われた。

*5 チャールズ皇太子とエリザベス女王の関係について表した言葉だが、女王に頼りきりのイギリス国民のことでもある。またフロイトの精神分析では、マザコンと同性愛に密接な関係があるとされる。1960年代までは同性愛が違法であり、罰として化学的去勢が行われていた。ちなみに「Queen」は同性愛者を意味する言葉でもある。

*6 ルイス・キャロルの詩に『セイウチと大工 (The Walrus and the Carpenter)』がある。これはセイウチと大工が牡蠣を食べるだけの話だが、その後にどちらの方が良心があったかをトゥイードルダムがアリスに問う。セイウチの方は牡蠣に対して罪の意識を口にしたものの、牡蠣を散歩に誘い出してさまざまな話を引き出すことで、結果的には大工よりも多くの牡蠣を捕食していた。そしてこの歌詞では、セイウチを女王、自身を牡蠣に例えている。

しかしこの「大切なこと」を話しても、女王は自分の髪型が崩れないかどうかを一番に考えている。つまり、これらが上辺だけの空虚な議論であることを物語っている。

*7 これは君主との隔たりを感じる一般人側の言葉としても捉えられるが、イギリス史上最長在位の君主であるエリザベス2世が、王室という隔離された世界で長年孤独に生きてきたことを表しているとも捉えられる。