UK GRIM – Sleaford Mods / スリーフォード・モッズ 和訳

UK GRIMSleaford Mods / スリーフォード・モッズ の和訳。EU離脱後、イギリスの経済は低迷している。EU諸国との物流は混乱し、手続きも複雑化したことによりイギリスを離れる人が増えた。MVでは、ブレグジットを牽引した人々の笑顔が並ぶ。

MV

UK GRIM – Sleaford Mods 和訳

オリジナル🔗Genius

お触れ役が叫ぶ「私たちが大麻を持っているわけがないでしょう?」*1
「世相を表す出来事」という陳腐な言葉が、ノンストップで書かれ
フルメタルジャケットが放たれた
袋の中で沸騰するツワモノ、射撃者だ
止まれ、崖があるぞ
ハートリー・ヘアとウラジミールはトップオフ*2
上着を脱いだあいつは、お前をすぐに仕留められる
クソ、良い体してやがる
大爆発、でも10番地じゃ俺はブルース・バナーになれない*3
俺には危機へのスタミナがある
フルマラソン、4回のクソ休憩
そのクソを感じる、お前の危機光線が俺の背中に当たるのを
なぜならイングランドじゃ、お前の叫び声は誰にも届かない
お前らに未来はない

これがUKグリム
そのデスク周りをキレイにして
ゴミ箱へ投げ捨てろ!
これがUKグリム
これがUKグリム
そのデスク周りをキレイにして
ゴミ箱へ捨てろ!
これがUKグリム

お前の運命は矛盾と偽善だ、もう認識してるだろ
トップ5アルバムなんて意味ねえよ、電気の通らない場所じゃ
全部くたばれ!
俺はお前を喜ばせに来たんじゃねえ!
リズ・トラス、同調*4
ビジネス地区の通りはスムーズに進める
ホワイトのレンジローバーが鼻歌を歌う場所
美しい音色
白シャツ、ランチを満喫した腹
スリーサム、富麻疹
コーンフレークを貫通して
クラック・フォレストケーキくらい、一人占めしたい*5
俺は頭の中でドラッグをやるから、やっとベッドで寝付ける
その夢のような情景をぶちのめしながら

これがUKグリム
そのデスク周りをキレイにして
ゴミ箱へ捨てろ!
これがUKグリム
これがUKグリム
そのデスク周りをキレイにして
ゴミ箱へ捨てろ!
これがUKグリム

でもそれが去って行ったら
その軌跡を心に留めろ
でも奴らが来たなら
朝駆けの如く、その考えは打ち砕かれる

でもそれが去って行ったら
その軌跡を心に留めろ
でも奴らが来たなら
朝駆けの如く、その考えは打ち砕かれる

でもそれが去って行ったら
その軌跡を心に留めろ
でも奴らが来たなら
朝駆けの如く、その考えは打ち砕かれる

これがUKグリム、ゴミ箱へ捨てろ
これがUKグリム、ゴミ箱へ捨てろ
これがUKグリム、ゴミ箱へ捨てろ
これがUKグリム、ゴミ箱へ捨てちまえ!

注釈 / 解説

*1 イギリスでは1971年に薬物乱用法が制定されたことにより、大麻の娯楽的使用が禁止されている。違法になってからも、デイヴィッド・キャメロンボリス・ジョンソンといった歴代の英首相が大麻を使用していたのは有名な話だが、他にも大麻を吸っていた政治家は結構いるらしい。保守党のマイケル・ゴーヴ議員も、タイムズ記者時代にコカインを吸引していた

*2 ハートリー・ヘアは『ピプキンス』というイギリスの子ども向け番組に登場するウサギのキャラクター。この番組にはトップオブというサルのキャラクターも登場する。セサミストリートを目指して作られたらしいが、全体的にモンスターみが強い。

*3 ここのナンバー10は、ダウニング街10番地を指している。イギリス首相が居住する場所である。そしてブルース・バナーはマーベルに登場するスーパーヒーロー。爆弾実験中にガンマ線を浴びたことから、超人ハルクになった。

*4 リズ・トラス前英首相のこと。下記の動画は、労働党のキア・スターマー党首から減税政策について詰められている時の名シーン。最後に「I’m a fighter, not a quitter (私は戦います、責任を放棄しません!)」と言い残し、翌日に辞任を発表した。

*5 ブラック・フォレスト・ケーキの捩り。ブラックならぬクラック (コカイン)。

MVのレファレンス

三美神像
アグライアが「美」を、エウプロシュネが「喜び」を、タレイアが「豊穣」を司る
via WikiCommons

この曲のミュージックビデオは、コラージュ・アーティストのコールド・ウォー・スティーヴによって制作されている。オープニングはのどかな田園風景で、ブレグジット党(現リフォームUK)の代表であるナイジェル・ファラージが笑顔を向けている。その上ではスピットファイアという戦闘機が飛んでいるし、次の場面では馬肉を貪る人々が映し出される。イギリスで馬肉食はタブーなのだが、馬肉すら食べざるを得なくなった国民の窮状を表している。

労働党のセブ・ダンス議員が掲げる「彼は嘘をついています

イギリスに蔓延る問題はそれだけではない。分かりやすい例でいくと、コロナ流行中に保健相であったマット・ハンコックが、同僚のジーナ・コラダンジェロとオフィスで文字通り濃厚接触していたことが発覚し、保健相を辞任している。

最近特にヤバそうな人はミシェル・モーンという議員である。彼女はもともとランジェリー企業を立ち上げて成功した実業家で、夫もビリオネアの実業家。しかしなぜかコロナ禍、マスク確保のための事業者選定において、PPEメドプロという企業を彼女はやたら推薦した。結局この業者に決まり、契約額は2憶ポンドに上った。そして欠陥だらけの商品が納品され、医療現場では深刻なマスク不足に陥ったのである。一方で利益はきっちり彼女とその親族の個人口座へ入っていた。

少し古い話だが、「メディア王」と呼ばれるルパート・マードックがデカデカと写っていたので触れておく。ニューズ・コープの子会社であるニューズ・インターナショナルは、2005年頃から記事のネタのために電話盗聴を行っていた。当初は王室、政治家、芸能人だけが対象だと言っていたものの、一般人に対しても盗聴を行っていたことがのちに明らかとなった。とりわけ13歳の少女ミリー・ダウアーの事件は印象深い。彼女が行方不明になった直後、彼女の留守電をニューズ・コープがハッキングし、不要だと思われる録音を勝手に削除した。彼女はこの時すでに殺害されていたが、これによってまだ彼女が生きているとミリーの両親に残酷な希望を抱かせたのである。

ところで、ミュージシャンの間でもブレグジット賛成派と否定派に二分されるのだが、賛成派であっても流石に現状を喜んでいる人は少ない。しかし、このお粗末な結果が出ても頑なになっているのがロジャー・ダルトリーである。彼が偉大なミュージシャンであることに間違いはないが、ことにブレグジット関連の発言に関してはファンを落胆させている。「Won’t Get Fooled Again (もう騙されない)」と言ってたのにと思う人は多いだろう。あれは結局ピート・タウンゼントが書いた曲なので仕方ない。