John L – black midi / ブラック・ミディ の和訳。タイトルのジョン50世(L=50)とは、どうやらカルトリーダーのようだ。しかしその出で立ちにしろ、教義の中身にしろ、どことなく胡散臭い。最終的にリーダーが生み出すものは、信者からの反逆である。
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和訳
「サニーボーイ」を3回アンコール、アコーディオンの伴奏のみで合唱され*1
青白いブルネットの女たちは、3列に並んで彼を群衆から守っている*2
その幕は、バーミリオンの紛い物の縫い合わせ*3
そして赤い電球が照らす玉座は、発見されたものなのだ*4
これがジョン50世が町にやってきた時の、メインストリートの光景だ
そう、これがジョン50世が町にやってきた時の、メインストリートの光景だ
さまざまな年代、信条、性別が集まった群衆
キッチュ閣下は、参加者の罪をスキットにして、ひとつひとつその詳細を歌い上げる*5
アリクイたちは舞台袖に初めて我を失い
王に圧倒され、赤い斑点を熱心に掻き毟ったのである
世界のどこにいても、地獄の騒音から逃れることはできない
世界のどこにいても、地獄の騒音から逃れることはできない
「ベツレヘムの子どもたち、男女みな集まって
これを聴きなさい、我の永遠なる言葉を
相手を判断する材料は、その発言ではない
その丸い目、唇、耳、くびれである
人は国であり、あなたの国はあなたなのだ
すべての悪は忠告された、ならばすべての善が実現するであろう」
ジョン50世が町にやってくると、メインストリートではこういった言葉が聞こえる
そう、ジョン50世が町にやってくると、メインストリートではこういった言葉が聞こえる
歌でもない、うがいのような声が、群衆を混乱へ突き落とす
彼が出す甘い声のエコーは、もう聞こえない
青白さが消えたブルネットの女たちは、二手に裂かれ
アリクイたちの鼻元に投げ入れられたのだ
ジョン50世の服はぼろぼろで、彼の足下の木箱は奪われ
引き裂かれた彼のローブは、地球の切り株を飾っていた
軍の搾取など、どんなものも長続きはしない
それが育てるのは、血まみれの、自らの栄光を求める人間なのだから
これがジョン50世が町にやってきた時の、メインストリートの光景だ
そう、これがジョン50世が町にやってきた時の、メインストリートの光景だ
脚注
*1 「サニーボーイ (Sonny Boy)」は、アル・ジョルソンが映画『シンギング・フール』で歌ったことで有名な曲。見ての通り、黒塗りの顔で歌う様子は当時こそ面白がられていたものの、今では人種差別にあたる。この曲は3歳の息子に対する父親の愛を歌ったものだが、「あなたは天からの贈り物…」といった歌詞は、信者が教祖に向けて歌う内容としてもピッタリだ。
*2 一般的にボディガードといえば屈強な男を思い浮かべるが、ジョン50世の周りを囲うのは弱々しい女性集団だ。おそらくカルトリーダーの性奴隷であることを示唆しているのだろう。このように、カルトリーダーが地位を濫用するケースは多い (最近だと懲役120年を言い渡されたNXIVM創設者のキース・ラニエールなど)。
*3 バーミリオンは朱色のことで、絵具の色としては最も高価。しかしこのバーミリオン色の幕はハリボテである。
*4 玉座が「発見された」とは、すなわち選ばれて勝ち取った地位ではないということ。ジョン50世は50世代目のリーダーなわけだが、それはそのカルトの歴史が長いことを意味するわけではない。不信感を覚えた信者がリーダーを殺害し、その度に新しいリーダーが誕生する、その暴力のサイクルが早いだけに過ぎない。
*5 「キッチュ (Kitsch)」は、インチキ、俗悪の意。
歌詞