People Get Ready – Jeff Beck, Rod Stewart / ジェフ・ベック, ロッド・スチュアート 和訳

People Get Ready – Jeff Beck, Rod Stewart の和訳。インプレッションズの代表曲「ピープル・ゲット・レディ」の、ジェフ・ベックとロッド・スチュアートによるカバー。この曲は60年代の公民権運動において特に重要な曲で、列車は自由の象徴である。

MV

People Get Ready – Jeff Beck, Rod Stewart 和訳

オリジナル🔗Genius

みんな準備をするんだ、もうすぐ列車が来るぞ
荷物なんて要らない、ただ乗り込めばいい
必要なものは信仰心だけ、それがあればディーゼルの鼻歌が聞こえてくるさ
切符なんて要らない、君は神に感謝すればいいんだよ

乗り込む準備をするんだ、ヨルダン行きの列車へ
国中の乗客を乗せていくから
その扉を開ける鍵は信仰心だ、じゃあ乗り込め
最も愛される人々は、みんな席に座れるさ

希望のない罪人が座る席はない
自分が助かるためだけに、人を傷つけるような人間なんかに
だから望みの薄い彼らを憐れむんだ
王国の玉座から隠れる場所はないのだから

だからみんな準備をするんだ、もうすぐ列車が来るぞ
荷物なんて要らない、ただ乗り込めばいい
必要なものは信仰心だけ、それがあればディーゼルの鼻歌が聞こえてくるさ
切符なんて要らない、君は神に感謝すればいいんだよ

俺は準備ができてる
俺は準備ができてる
今回は、準備ができたよ
今回は、準備ができたよ

注釈 / 解説

アメリカで最初の鉄道が開通したのは1830年のこと。これ以前から黒人奴隷の亡命を手助けする「地下鉄道」という組織が密かに活動を続けていたが、列車という手段が加わったことによりこの解放運動は加速した。ブラックミュージックに「trains (列車)」や「highways (交通路)」などの言葉がよく使われるが、「分かる人」の間では、これが自由・解放を意味するものであった。

しかし1850年に逃亡奴隷法が制定され、逃亡者に加えて逃亡を幇助した者も処罰対象となり、自由への道はまた遠のいてしまう。

地下鉄道
via WikiCommons

それから100年以上もの月日が経ち、キング牧師が有名な演説「I Have a Dream」を行う。このワシントン大行進では「勝利を我等に (We Shall Overcome)」が大合唱され、やっと希望の光が差し始めたかのように見えた。しかしその数週間後の9月15日には、16番街バプティスト教会爆破事件が起きる。これは白人至上主義団体KKKによる犯行で、4人の黒人少女が犠牲となった。また同年の11月22日にはケネディ大統領暗殺事件も発生している。

「ピープル・ゲット・レディ」は、このような時代背景を受けて書かれたカーティス・メイフィールド版の「Go Down Moses」だ。奴隷制度、それに伴う構造的人種差別の罪、そしてそれからの解放を約束する希望の歌である。神は祈る者、信じる者を最も愛するので「信仰心」さえあれば誰でも解放の列車に乗ることができる。向かう先はヨルダン川、つまり約束の地。反対に、人を傷つける者には罰が与えられ、そこから逃れることはできないと書かれている。投票権法を廃止しようとする白人議員、黒人を痛めつける白人警官、公民権運動家を殺害するKKK、彼らは警告を無視してもなお差別を続けるので「救いようのない罪人」なのだ。

キング牧師は、公民権運動の非公式アンセムとして「ピープル・ゲット・レディ」を使うようになった。さらにこの曲は商業的にも成功を収め、現在では約200曲のカバーバージョンが存在するなど、様々な面で人々に多大な影響を与えている。