Schizophrenia – Sonic Youth / ソニック・ユース 和訳

Schizophrenia – Sonic Youth の和訳。アルバム「シスター」はSF作家のフィリップ・K・ディックの妹という存在をテーマにしたコンセプトアルバムである。そしてこの曲に関しては、統合失調症であるキム・ゴードンの兄からも着想を得ているようだ。

シングル・アルバム情報

Sister (1987) 収録曲

ミュージックビデオ・オーディオ

和訳

俺は出かけて 昔からの友達に会いに行った
そこにそいつの妹が来たんだけど なんだか乱心してた
キリストには双子の兄弟がいて 罪が何であるかを知らなかったとか言って
俺がトラブルに巻き込まれると こいつは馬鹿みたいに笑い出す
明るい色の瞳が踊ってる 気が狂ってんだろう
そいつの兄は言ってた 妹はゴールドチェーンをつけたビッチだってな
その妹は近づいてきて こんなことを言い続ける 「この骨に感じる
統合失調症が私を家に連れて帰るんだよ」

私の未来は静的
もうすでに手に入れたから
あなたを一緒に入れてあげてもいい
それについて話したっていい
私は夢を見た
そしてそれはどこかへ去って行った
でも私にはあの感覚がある
それはまた私のもとに戻ってくる

解説

フィリップ・K・ディック
via Wikimedia Commons

フィリップ・K・ディック (Philip K Dick) は『アンドロイドは電気羊の夢を見るか? (Do Androids Dream of Electric Sheep?)』、『高い城の男 (The Man in the High Castle)』などで有名なSF作家。彼には双子の妹のジェーンがいたが、母乳アレルギーが原因で誕生から数週間後に亡くなった。彼の作品に「片方だけ生き残った双子」がよく登場するのはこのためである。この曲の歌詞にも「妹 (sister)」と「双子 (twin)」というキーワードが出てくる。これは「ジェーン」というフィリップの「妄執」を指している部分が大きい。

歌詞中に「キリストには双子の兄弟がいた」と言っている部分があるが、これに関しては完全な妄想ではない。実際にキリスト教のグノーシス派が「キリストにはトマス (Thomas) という双子の兄弟がいた」という説を提唱しているのである。

フィリップもグノーシス派であった。1970年代に入ると「フィリップ・K・ディック」という生活以外に、1世紀頃にローマ人によって処刑されたキリスト教徒の「トマス」として二重生活を送っているのだと本人は主張し始めた。このような妄言こそが彼の創作の原点であり、「妄想型統合失調症」の典型的な症状でもある。

キム・ゴードンの兄のケラーも同じ妄想型統合失調症を患っており、その関わりにおいてキム自身苦労したようである。彼女曰く「ずっと一緒にいた人が、突然知らない人になった」そうだ。そしてこれは、元夫のサーストン・ムーアに向けられた言葉でもある。

歌詞