Electioneering – Radiohead / レディオヘッド 和訳

Electioneering – Radiohead の和訳。トニー・ブレア政権が発足して間もなくリリースされたこの曲は、選挙活動で聞いた耳当たりの良い言葉の数々に対する不安が凝縮されている。

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和訳

私が止まることは 決してない
選挙活動中は 正しいことを言うんだ
あなたが一票を投じてくれると信じています

私が前進すれば
あなたは後退する
そしてどこかで 私たちは出会うだろう
私が前進すれば
あなたは後退する
そしてどこかで 私たちは出会うだろう

ライオットシールド、ブードゥー経済学、次はあなたの番だ、次はあなたの番だ
ただのビジネス、牛追い棒とIMF
あなたが一票を投じてくれると信じています

私が前進すれば
あなたは後退する
そしてどこかで 私たちは出会うだろう
私が前進すれば
あなたは後退する
そしてどこかで 私たちは出会うだろう

解説

1997年5月1日にトニー・ブレアが英首相に選出され、労働党の支援者はD:Reamの曲「Things Can Only Get Better (これからは良くなることしかない)」に合わせて、労働党の大勝利に乾杯した。その数週間後、バンクォーの亡霊のように現れた「OK Computer」が、「いや、悪くなることしかない」と警告したのである。

残念ながらこの予想は的中してしまう。トニー・ブレアが打ち出した「第三の道」に人々は期待を寄せたが、サッチャリズムを継承した新自由主義的な経済政策によって労働党からの反発を招いた。曲中に登場する「ライオットシールド (riot shield)」とは、これは暴動を食い止めるために警官が使用する透明の楯のことだ。実際に、グローバリゼーションに反対する暴動が起きた。

コーラスは「トリクルダウン経済 (Trickle down economy)」に対する皮肉である。「トリクルダウン」とは「金持ちがもっと豊かになれば、いずれ貧しい者もそのおこぼれに与ることができ、結果的に経済全体が良くなる」という経済理論のこと。「自分が前進すれば、相手は後退する」は、このトリクルダウンが格差を広げていることを示している。にもかかわらず「どこかで私たちは出会う」という希望的観測で片付けられ、低所得者が置いてけぼりになる構造が的確に表現されている。

「ブードゥー経済学 (voodoo economics)」という言葉も、このトリクルダウンを揶揄する言葉だ。これはもともと、ジョージ・H・W・ブッシュが対抗馬であったロナルド・レーガンの政策「レーガノミクス」を批判するために使われた。

そして国際通貨基金 (IMF)。IMFは発展途上国に融資を行っているが、その条件が年々肥大化していった。その結果、貧しい国はIMFへの借金を抱えてさらに貧しくなった。これを踏まえると、IMFが牛追い棒 (cattle prod) を持って発展途上国を突く絵は想像しやすいだろう。

「I trust I can rely on your vote」という表現は、選挙候補者が票を獲得するために使う決まり文句であるが、1997年のインタビューによると、トム・ヨークが大勢の人と握手することに嫌気が差した時に使ったジョークから派生しているらしい。これに加えて、「エリート層が政治を私物化し、民衆は無力化された」という論を展開するノーム・チョムスキーの著書の影響を受けているようだ。

歌詞