Unknown Brother – The Black Keys / ザ・ブラック・キーズ 和訳

Unknown BrotherThe Black Keys の和訳。「見知らぬ兄弟」とは、ダン・オーバックの前妻ステファニーの兄弟のことだ。癌により逝去した「兄弟」はまだ高校生だった。ダン自身は彼に会ったこともないが、彼の物語はこうして語り継がれていく。

この曲はアルバム「Brothers」のコンセプトでもある。「brother」は兄弟だけでなく、兄弟のように親しい仲の友達に対しても使う。気に障っても、罵倒し合っても、いつの間にか許してしまう強い繋がりが「brother」だ。この言葉は、決して仲が良いとは言えないが、なんだかんだでまだ活動を続けているザ・ブラック・キーズの二人にも当てはまる。

シングル・アルバム情報

The Black Keys バンド名の由来

よく勘違いされるバンド名の意味にも触れておく。「black keys」は黒いカギではなく、どちらかと言えば「ピアノの黒鍵」を表しているが、それもまた違う。

この由来には、アルフレッド・マックムーア (Alfred McMoore) というアウトサイダーアーティストが関係する。

ダンの父親であるチャック・オーバック (Chuck Auerbach) はアートコレクターであり、彼の作品の販売を手伝っていた。そして近所に住んでいたパトリックの父親、ジム・カーニー (Jim Carney) に彼を紹介する。

アルフレッドには独特の感性があった。ジムの留守電にはアルフレッドがこんなメッセージを残している。

This is Alfred McMoore. Your black key is taking too long

この訳には、「アルフレッド・マックムーアです。あなたのブラック・キーは長くかかりすぎています」という機械的な翻訳がピッタリだろう。「black key」とは、アルフレッドの気に入らないものを指す。この場合は、すぐに電話に出ないジムに対しての苛立ちを「ブラック・キー」と表現している。

このセンスの塊とも言えるユニークな表現を気に入って、彼らは「The Black Keys」というバンド名となったのだ。

アルフレッドは統合失調症で生涯苦しみ、ほとんどの人生を施設で過ごした。そして2009年に59歳でその生涯に幕を下ろした。ジムはアクロン・ビーコン・ジャーナル (Akron Beacon Journal) で哀悼の意を表し、ザ・ブラック・キーズは地元オハイオでアルフレッドへの追悼ライブを開催した。

ミュージックビデオ・オーディオ

和訳

君とは会ったこともない 言葉を交わしたことも
でも君の話は聞いてるから 忘れることなんてないよ
見知らぬ兄貴 うちの子どものお母さんは辛い思いをしてる*1
君の魂が天国にあっても 君の思い出はここにある

見知らぬ兄貴
いつか会おうよ
見知らぬ兄貴
草原を歩いて行こう 子どもたちが遊んでいる場所で*2

君が小さかった頃 君は目を輝かせてた
君は姉妹に愛されてたんだ やることなすことすべて
兄貴 心配しなくていい
君の炎は霞んでもない それに炎が灯された日から

君の人生は 喜びそのものだった
君のお母さんにとっての たった一人の息子
空が青くなると
兄貴 みんな君を想って悲しみに暮れてる

まだ少年だった君の写真みたいに みんなで笑顔になろう
君が天国の喜びになっていく前に

見知らぬ兄貴
いつか会おうよ
見知らぬ兄貴
草原を歩いて行こう 子どもたちが遊ぶ場所で


脚注

*1 「うちの子どものお母さん (my baby’s mama)」はダンの当時の妻のことであり、「見知らぬ兄」にとっての妹である。

*2 亡くなった時点で、まだ子どもだったことを表している。

歌詞