Deutschland – Rammstein / ラムシュタイン の和訳。ドイツ国家を擬人化した「ゲルマニア」に対する愛と憎しみを歌った問題作。ドイツの過ちは「冷たい吐息」と表現され、映像では2000年前から続く歴史を振り返っている。
Deutschland – Rammstein 和訳
[Strophe 1]
お前は (お前は、お前は、お前は、お前は)
たくさんの涙を流してきた (涙を、涙を、涙を、涙を)
引き裂かれた精神でも (引き裂かれ、引き裂かれ、引き裂かれ、引き裂かれ)
心はひとつ (ひとつに、ひとつに、ひとつに、ひとつに)
俺たちは (俺たちは、俺たちは、俺たちは、俺たちは)
しばらく共に過ごしてきた (お前たちは、お前たちは、お前たちは、お前たちは)
お前の吐息は冷たく (冷たい、冷たい、冷たい、冷たい)
お前の心は燃えている (熱く、熱く、熱く、熱く)
お前 (お前なら、お前なら、お前なら、お前なら)
俺 (俺は知ってる、知ってる、知ってる、知ってる)
俺たち (俺たちは、俺たちは、俺たちは、俺たちは)
お前たち (お前たちは残る、残る、残る、残る)
[Refrain]
ドイツよ! 俺の心は燃え上がる
お前を愛したい そして罵倒したい
ドイツよ! お前の吐息は冷たい
これほど若く これほど老いた*1
ドイツよ!
[Strophe 2]
俺は (お前は、お前は、お前は、お前は)
お前を置き去りにしたくはない (わかってる、わかってる、わかってる、わかってる)
お前は愛されるはずだ (お前は愛する、愛する、愛する、愛する)
しかしお前を憎みたい (お前は、お前は、お前は、お前は)
高圧的な 高等民族
主導権を握っては 明け渡す
不意を突いて 侵略する*2
ドイツ 世界に冠たるドイツよ*3
[Refrain]
ドイツよ! お前の心は燃え上がる
愛したい そして罵倒したい
ドイツよ! 俺の吐息は冷たい
これほど若く これほど老いた
ドイツよ! お前の愛は
侮辱であり 祝福だ
ドイツよ! 俺からの愛は
捧げられない
ドイツよ!
[Bridge]
お前
俺
俺たち
お前たち
お前 (力を持ち過ぎた、必要以上に)
俺 (超人、うんざりだ)
俺たち (高く登った者は、深く落ちていく)
お前たち (ドイツ、世界に冠たるドイツよ)
[Refrain]
ドイツよ! お前の心は燃え上がる
愛したい そして罵倒したい
ドイツよ! 俺の吐息は冷たい
これほど若く これほど老いた
ドイツよ! お前の愛は
侮辱であり 祝福だ
ドイツよ! 俺からの愛は
捧げられない
ドイツよ!
注釈
*1 後述する「トイトブルク森の戦い」において、ゲルマン諸部族がローマ帝国を破った紀元9年頃から、ドイツの歴史は始まったと言える。しかしドイツ連邦共和国の誕生は1949年であり、ドイツ再統一に至っては1990年であるため、まだ歴史は浅いとも言える。
*2 第二次世界大戦で使用された「電撃戦」という戦術のこと。
*3 ドイツ連邦共和国国家「ドイツの歌 (Deutschlandlied)」の引用である。
MV
このMVにはドイツの歴史のほか、聖書、映画、音楽などさまざまなレファレンスが含まれる。重要な部分をピックアップして解説する。
トイトブルク森の戦い
舞台は紀元16年の大ゲルマニア (Germania magna)。これはローマ語で現在のドイツを指す言葉である。
ローマ兵士たちが迷い込んだ森の木には、死体が吊られている。これはドイツの歴史において非常に重要な「トイトブルク森の戦い」が起きたことを示している。この戦いで、アルミニウス率いるゲルマン連合軍がローマ軍をほぼ全滅させたことから、これをドイツの誕生と考える人も少なくない。この戦いの後、このトイトブルクの森にあるすべての木にローマ人の死体が吊られたと伝えられている。
ゲルマニア
ドイツ国家を擬人化した姿が「ゲルマニア」であることは既に述べたが、一般的には赤毛の女性の姿で描かれる。ゲルマニア役として敢えて黒人女優のルビー・コミー (Ruby Commey) を起用している理由は、やはり「移民問題」への言及だろう。
このシーンの背景には、第二次世界大戦で使用されたドイツ海軍潜水艦Uボートが見える。
ヴァイマル共和政
フラッパーという派手な装いのゲルマニアは、ヴァイマル共和政 (1918-1933)の象徴である。文化的には自由主義となったが、ボクシングシーンが表すように、非常に不安定で危険な政権であった。
東ドイツ
東ドイツの国章が飾られる部屋には、マルクスとレーニンの胸像が置かれている。さらに、東ドイツを財政破綻の危機に招いた政治家エーリッヒ・ホーネッカーと、ドイツ人初の宇宙飛行士ジークムント・イェーンがいる。
ちなみにキスをしている様子は「神よ、この死に至る愛の中で我を生き延びさせ給え」というグラフィティ・アートのレファレンスで、これは社会主義国家の首脳間で行う特別な挨拶である (Sozialistischer Bruderkuss)。
ヒンデンブルク号爆発事故
1937年5月6日に発生した、ドイツの飛行船ヒンデンブルク号の爆発事故のレファレンス。36名の犠牲者を出した大事故であり、これがきっかけで飛行船時代は終焉を迎えた。
ハイパーインフレーション
大金が舞い落ちて来る様子は、1921年から1923年にかけて発生したパピエルマルクの価値の大暴落、ハイパーインフレーションを意味している。ヴァイマル共和政において、第一次世界大戦の影響で通貨が乱発されたことにより発生した。
この時代はスーパーへ買い物に行くにも手押し車が必須だった (卵1個が3200憶パピエルマルク)。朝の10時には500万マルクだったものが、昼の3時になると1200万マルクになるという状況で、国民を苦しめた。
ホロコースト
これが最も物議を醸したシーンである。V2ロケットが映っていることから、舞台はミッテルバウ=ドーラ強制収容所だろう。
一番左の囚人にはピンク・トライアングルと呼ばれる胸章がある。つまり「同性愛者」のことだ。隣の囚人は黄色い星なので「ユダヤ人」。さらに隣は赤と黄色の星なので「ユダヤ人の政治犯」であることを示している。